ATTENのデジタルオシロADS1102CALを買ってみた
・概要
中国の計測器メーカー、ATTENのデジタルオシロスコープADS1102CALを買ってみたのでとりあえず軽くまとめました。
リスクはありますが3万円ちょいで手に入る、100MHz 2chのデジタルオシロスコープです。
軽くてコンパクトで高性能なオシロが手に入り、重くて大きいアナログオシロは手放せそうです。
日本語のレビューはおろか、メーカーの製品一覧にも載っていないのですが大丈夫なのでしょうか…
※注意
この記事は、記事中の店舗・商品の完全性を保証するものではありません。
実際に購入される場合は自己責任でお願いします。
1.品定めから購入、到着まで
品定め、店定め
100MHz帯域くらいのデジタルオシロが欲しかったのですが、高くて手が出ませんでした。
有名メーカ(Ag社、Te社)などの製品はどれも15万円以上します。
そんな中、海外の通販サイトで中国メーカーのオシロが売られているのを発見しました。
・画面が7インチワイドで大きい
・解像度も480x234と他より大きい
・もちろん加算、減算、FFTなどの演算機能あり
・USBメモリに対応
といった条件から、ATTEN社のADS1102CALを選択しました。
私が見た中ではgoodluckbuy.comが最も安く、$393.5でした。
(01/20追記)dealexcel.comで$380ですね。このショップは私は使ったことがありません。
海外通販(特に中国)の場合、ちゃんと品物が正しく届くかどうかが不安になりますのでよく調べましょう。
私の場合、googleで評判を見る、安価なものを試しに注文してみる、Paypal対応の3点ははずせません。
特にPaypal対応は大きく、買い手保護が充実しているので万が一届かなかったりしても対応してもらえます。
また、発送方法は必ずトラッキングナンバーが付く方法かどうか確認しましょう。
goodluckbuy.comの場合、トラッキングナンバー付きはオプションで+$1.5です。
それ以外の送料・手数料はかからず、Paypalのレートで約3万2千円になりました。
注文から到着まで
日付 | 内容 |
1/06 | 注文。Paypalよりカード会社に約3万2千円の請求が発生。 |
1/08 | order status欄がcompletedになるものの、トラッキングナンバー記載なし。 きちんと発送されたのか不安が募る。 |
1/12 | ようやくトラッキングナンバーが表示された。 中国郵政のEMS検索ではヒットせず、不安が残る。 |
1/14 | EMS検索でヒットするようになった。 本日発送ということになっている(ぉぃぉぃ |
1/15 | 中国の税関を通過。 |
1/16 | 大阪国際空港に到着。 |
1/17 | 日本の税関を通過。 |
1/17 | 到着。 |
税関の通過に際して、関税、消費税、通関手数料などの請求はありませんでした。
(後日請求がある場合があるのでまだ油断はできない)
2.いざ開梱
でーん!
やたら黄色いのが目に付きます。
黄色い包みを剥がすと…
どうやら透けないように黒いビニールシートで包んで、黄色いテープでグルグル巻きにしてあった模様です。
”数字示波器”さんこんにちは。
箱が凹んで折れ目が付いてるけど大丈夫でしょうか…
開梱!
これだけスカスカなら箱が凹んでも大丈夫ですね。
本体は空気穴のあるポリ袋に、乾燥剤と一緒に入れられていました。乾燥剤の意味がないww
中身。
電源コードは日本対応のものでした。まあ台形コードなんて腐るほどあるから異国のものでも構わないのですが。
何か物足りない… 取説もドライバCDもない!
これは衝撃的ですよ。
まぁオシロくらいマニュアル読まずにサクっと使いこなせないと駄目ですけどね。
とりあえずオシロスコープらしきものが入っていました。
続いて動作チェックへ。
3.動作チェック
起動!
なんか背景がVistaみたいですね…
よく見るとうっすら文字が映っていますが、撮るタイミングが悪かっただけで、焼け付いているわけではありません。
冷却ファンがあり、電源を入れた時点で作動します。
実に静かです。となりで誰か寝ていても気兼ねなく使えるレベルです。
ちなみに消費電力は約15Wでした。後述のアナログオシロが40Wだったので省エネです。
最初の画面。
デフォルトでは中国語ですが、わかりやすいところにLanguageがあるので助かります。
左上のATTENがいい味を出していますね(^^
Language
英語はもちろん、日本語すらあります。
しかし測定器の表示が日本語というのは気持ち悪いので、もちろん英語に設定。
内部情報
内部情報を表示したところです。中古ではないようですね。
プローブ
安っぽい100MHzプローブが付属しています。
安っぽいとはいえ、1:10切り替え、位相補償用トリマはもちろん、識別用色リングも付いています。
ケーブルが絡まってもどっちのCHか判らなくならないので安心です。
キャリブレーション用信号
キャリブレーション用信号を映したところです。
プローブ倍率を設定できるので換算不要で便利ですね。
4.性能チェック
周波数特性
ファンクションジェネレータなどという便利なものはあいにく持ち合わせていません。
持っていたとしても、100MHz超が出せるような高性能なものではないはずです。
というわけで様々な周波数の3.3V LVCMOS信号を入力して、振幅からゲイン特性を起こしました。
青線は本機に秋月で扱っているTexas製60MHzプローブを使用した場合、
赤線は本機に付属の安っぽい100MHzプローブを使用した場合、
黄線は参考までにどこのご家庭にもあるアナログオシロ(40MHz帯域、SS-5705)での測定結果です。
やはり付属のプローブは性能がよろしくないようです。60MHzプローブに負けています。
それでもFc=100MHz@-3dBを確保しているので、カタログスペックに偽りなしですね。
水色の領域はアナログオシロでは時間分解能不足のため振幅は読み取れますが波形が見えなくなっています。
カタログ値どおり、所有しているアナログオシロをはるかに上回る性能がありました。
デジタルオシロは帯域よりはるかに高い時間分解能を持つので、振幅がなくなるまで波形が見えます。
アナログオシロは帯域外の信号の減衰が緩やかで”なんとなく”見えるという特性も確認できます。
時間軸精度
岩通の周波数カウンタSC-7102の10MHz基準出力を測定してみました。
残念ながらこのカウンタも古いので絶対的な精度は期待できません。
F=9.99970MHz
基準が正しいと仮定して、5桁程度の精度はあるようです。
日を置いて2回、10分ずつ測定しましたが、最下位1桁が1変わるのみでしたので安定性は良いようです。
オシロの周波数計測機能は値がパラパラと動いたり、精度がなかったりするので、良い方だと思います。
波形再現性
USBフルスピード(12Mbps)SOFパケット
エッジまでしっかり再現されています。
矩形波10MHz
若干リンギングが見られます。
矩形波30MHz
まだかろうじて矩形波を保っています。
矩形波50MHz
3次高調波が帯域外なので正弦波に近づきました。
矩形波70MHz
50MHzでもそうでしたが、共振のためか振幅が大きくなっています。
矩形波100MHz
スペック上の限界ですが、まだ振幅を保っています。
矩形波120MHz
振幅が小さくなりました。
5.便利機能
安物ではありますが、デジタルならではの機能を搭載しています。
・USBメモリへの画面保存
ここまでの波形はこの機能で取り込んだものです。
(01/20追記)
※USBメモリのフォーマットはFAT16またはFAT32のみ対応のようです。
NTFSやexFATの場合、挿すだけなら大丈夫ですが保存操作をするとファイルシステムが破損します。
なお、4GBを超えるUSBメモリでは空き容量が正しく表示されないので避けたほうが賢明です。
・USBメモリへの数値データ(CSV形式)保存
CSV形式で保存できるので、数値解析に使ったり、以下のようにグラフ化することもできます。
・PictBridge対応プリンタを使って印刷
PictBridge対応プリンタで印刷することができます。手持ちのプリンタがPictBridge対応でないのでこの機能は試せません。
6.悪いところ
これだけ安いので悪いところもあります。
・ボタンが時々チャタる(ゴムスイッチなのになんで!!)
・トリガポイント、水平位置、垂直位置など、つまみをかなり回さないといけない
・つまみを回している間、描画が止まる
・UIがもっさり
・付属のプローブがギリギリ性能
・取説やドライバCDがない
・ドライバやPCソフトはメーカーサイトに置いてあったが、ソフトから接続できず(WinXP/7)
7.まとめ
安価なオシロスコープですが、有用なものであることがわかりました。
安いなりに出来の悪い部分はありますが、測定に支障が出るようなものではありませんでした。
総合的に見て、いい買い物をしたと思います。
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